会社設立と事務所賃貸はどちらが先?4つの契約パターンと失敗しない選び方
2026/09/15【結論】会社設立と事務所契約の順番はどちらが先か?
会社は設立登記を完了するまで法人格が存在しないため、原則として未設立の法人名義では事務所を契約できません。
そのため、会社設立と事務所契約の進め方には大きく4つのパターンがありますが、実務上は「① まず代表者個人で契約し、設立後に法人名義へ切り替える」、または「② 自宅等を本店として設立し、借りた事務所には本店を移転しない」のどちらかが多く選ばれています。
一方で、「③ いったん自宅などで会社を設立し、事務所を借りてから本店を移転する」や「④ 契約前に内諾を得て登記し、設立後に法人契約する」という方法は、二重の手間・コストがかかる、あるいはトラブルのリスクがあるため、実務上はあまり選ばれません。
契約前に必ず確認すべきこと:その物件で法人登記が可能か
気に入った事務所が見つかった場合、賃貸借契約や申込を行う前に、必ず不動産会社または貸主(大家)へ「設立する会社の本店所在地として法人登記が可能か」を確認してください。
登記制限の確認: 事務所用途として賃貸可能であっても、契約条件によって法人登記が禁止されている場合があります。
管理規約の確認: マンション等の集合住宅の一室を借りる場合、賃貸借契約とは別にマンション管理規約によって事業利用・法人登記が禁じられているケースがあります。
「法務局での登記要件」と「契約上の承諾」は別問題: 法務局は賃貸借契約書の承諾有無を審査せずに登記を受理することがありますが、貸主に無断で登記すると重大な契約違反(契約解除事由)となります。
会社設立と事務所契約の進め方(4つのパターン)
これから事務所を借りる場合、登場する4つのパターンは以下の通りです。それぞれの実態と注意点を把握して検討することが大切です。
パターン①:まず個人で契約し、会社設立後に法人契約へ切り替える(実務上最も多いケース)
代表者となる方がまず個人名義で賃貸借契約を締結し、その事務所を本店として会社を設立登記した後に、契約名義を法人に変更する方法です。実務において最もよく利用されている一般的な進め方です。
メリット: スムーズに物件を押さえることができ、最初から希望の事務所住所で設立登記が完了します。
注意点: 契約後に突然名義変更を申し出ると、再審査や名義変更手数料が発生したり、最悪の場合は拒否されたりするリスクがあります。必ず契約申込の段階で「法人設立後に法人名義へ変更したい」「この住所を本店として登記したい」旨を貸主に伝え、切替方法や費用を事前に確認しておく必要があります。
パターン②:自宅を本店として設立し、借りた事務所には本店を移転しない(①の次によく選ばれるケース)
登記上の本店は代表者の自宅などに置いたまま、実際に仕事をする作業場・オフィスとして別途事務所を借りる方法です(登記上の本店と実際の営業所の分離)。実務上、パターン①に次いでよく選ばれる現実的な選択肢です。
メリット: 設立済みの法人名義でスムーズに事務所を契約でき、将来事務所を移転・拡大しても本店移転登記の手続きや費用が発生しません。将来の移転を見込んでいるスタートアップなどに適しています。
注意点: 自宅の住所が会社の本店として登記事項証明書に記載・公開されます。
また、許認可が必要な業種(宅建業や建設業など)では、登記上の本店と実際の営業所が異なる場合に要件確認が複雑化することがあります。自宅が賃貸の場合は、自宅側でも法人登記の可否確認が必要です。
パターン③:いったん自宅などで会社を設立し、事務所を借りてから本店を移転する(あまりないケース)
まずは自宅などを本店として会社を設立し、成立した法人名義で事務所を契約した後、本店をその事務所へ移転登記する方法です。
実務での実態: 最初から法人名義で賃貸契約を結べるため手続きの筋道は通りますが、設立登記の直後に本店移転登記(同管轄内なら3万円、管轄外なら6万円の登録免許税等)を行う必要があり、余計なコストと二度手間が生じるため、実務上はあまり選ばれません。
パターン④:内諾を得て事務所を本店登記し、設立後に法人名義で契約する(あまりないケース)
貸主や不動産会社から事前に承諾を得て、契約前の物件住所を本店として会社設立登記を行い、設立完了後にその法人名義で正式に契約する方法です。
実務での実態: 個人から法人への名義変更手続きが省ける利点はありますが、「未契約・未入金の段階で登記だけを許可してくれる貸主」は極めて稀であり、実務上はあまり見られません。 貸主との強固な信頼関係があるなど、特別な事情がない限り成立しにくい進め方です。
どの方法を選ぶべきか?判断のチェックポイント
事務所を最初から本店にしたい場合: パターン①を選択し、事前に貸主へ名義変更の合意を取り付けておく。
移転の可能性が高く、コスト・手間を抑えたい場合: パターン②を選択し、登記上の本店(自宅等)と営業所(事務所)を分ける。
パターン③や④を検討する場合: パターン③は二重の登記費用・手間がかかる点、パターン④は貸主の許可ハードルが極めて高い点を許容できるか慎重に再検討する。
よくある質問(FAQ)
Q. 設立登記前の「設立中の会社」名義で事務所を契約できますか?
A. 原則としてできません。法人は登記が完了して初めて権利能力(契約の当事者になる資格)を持ちます。そのため、代表者個人名義で先行して契約するか(パターン①)、自宅等で先に法人を立ち上げてから法人名義で借りる(パターン②)のが実務上の標準です。
Q. 自宅を本店にして事務所を別に借りる場合(パターン②)、法的な問題はありませんか?
A. 法律上、「登記上の本店」と「実際の業務を行う営業所」が異なっていても問題ありません。ただし、特定の許認可(宅建業、古物商、建設業など)を要する事業では、営業所ごとの独立性や実態確認が求められるため、事前の行政庁窓口への確認が必要です。
